この記事の要点
  • 材料費だけでなく、包装、手数料、物流、ロス、検品などを商品別に把握します。
  • 価格は原価だけで決めず、購入者が感じる価値と競合商品も確認します。
  • 販路ごとに施設へ残る売上が違うため、直販・委託・卸・ECを分けて計算します。
  • 必要経費を差し引いた後に、どれだけ工賃原資を生みたいかを計画へ入れます。

最初に確認する制度上の関係

指定基準では、B型事業者は利用者に対し、生産活動に係る事業の収入から、生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならないとされています。また、工賃水準を高めるよう努めること、年度ごとに工賃の目標水準を設定することも定められています。

基本的な関係

生産活動による収入 − 生産活動に必要な経費 = 工賃の原資

この関係があるため、商品が売れていても必要経費が大きければ、工賃原資は増えません。一方で、必要な経費を計算から外すと、販売を続けるほど資金や職員の運用負担が厳しくなる可能性があります。

具体的な勘定科目、共通経費の配分、積立、消費税の処理は、法人形態、採用する会計基準、自治体の運用、課税関係によって確認が必要です。本記事は会計・税務上の仕訳を指定するものではありません。

材料費以外に確認する原価

区分確認方法
材料・仕入原材料、部品、仕入商品商品1個当たりの使用量と仕入単価を記録
包装・表示袋、箱、ラベル、説明書、食品表示外装・内装・予備を含めて計算
販売費EC・決済手数料、出店料、委託販売手数料販路ごとの率・固定額を分ける
物流納品、宅配、保管、搬入、返品施設負担と購入者負担を分ける
試作・ロス試作品、不良、期限切れ、破損一定期間の実績を販売数量へ配分
品質・検査検品、衛生検査、外部試験、許認可関連商品・ロットに必要な費用を確認
設備・道具機械、金型、器具、修繕、消耗品使用期間や生産数量に応じた配分を検討
その他外注加工、デザイン、撮影、販促物初期費用と継続費用を分ける

費用を細かくしすぎると更新が止まります。最初は金額が大きい項目、値上がりしやすい項目、販路によって変わる項目から記録します。

価格を考える3つの視点

1. 原価: いくら未満では続けにくいか

材料、包装、販売、物流など、商品をつくって届けるために必要な費用を確認します。さらに、販売数量に対してどの程度の工賃原資を生みたいかを計画します。

2. 購入者の価値: 何に対して支払うか

味、品質、デザイン、使いやすさ、希少性、贈りやすさ、地域性など、購入者が選ぶ理由を確認します。「福祉施設で作った」という背景だけを価値の全部にしません。

3. 競合: 何と比べて選ばれるか

同じ用途、容量、品質、販売場所の商品を比較します。競合と同じ価格に合わせるのではなく、違いを説明できるか、売り場でどの価格帯に置かれるかを確認します。

中小企業支援の公的情報でも、価格は原価、需要、競合状況の3要素を踏まえて考えることが示されています。

工賃原資から考える計算例

次は考え方を示すための架空例です。実際の適正価格や会計処理を示すものではありません。

100個を販売する場合計画額
材料20,000円
包装・表示8,000円
販売・決済手数料5,000円
配送・搬入4,000円
試作・ロス3,000円
設備・検品等の配分5,000円
必要経費の計画45,000円
目標とする工賃原資30,000円
必要な売上の計画75,000円

100個すべてを同じ条件で販売できるなら、計画上は1個当たり750円の売上が必要です。ただし、これはそのまま店頭価格になるとは限りません。消費税、卸価格、委託販売手数料、売れ残り、送料負担などを販路ごとに反映する必要があります。

単価より「施設へ残る売上」を見る

購入者が支払う店頭価格が同じでも、直販、委託販売、卸、ECでは施設へ入る金額と必要経費が異なります。販売個数だけでなく、販路別の売上と経費を確認します。

販路ごとに計算を分ける

販路確認する条件見落としやすい点
施設・マルシェで直販出店料、決済、搬入、販売担当、売れ残り販売準備と当日の運用負担
委託販売販売手数料、精算、返品、破損、陳列売れるまでの在庫期間と返品
卸売卸価格、ロット、納品、掛取引、表示店頭価格ではなく卸売上で採算を見る
EC決済、モール、梱包、送料、保管、返品1件ごとの発送作業と小口資材
法人ギフト数量、名入れ、個別包装、納期、配送先試作、校正、短期集中の作業負担

一つの商品に一つの価格だけを設定して終えるのではなく、販売方法ごとに受取額と経費を試算します。卸や大口注文では単価が下がっても、販売・発送の負担が減る場合があります。反対に、数量が増えるほど検品や保管が増えることもあります。

価格を見直す6つの手順

  1. 商品別に実績を集める: 売上、販売数、材料、包装、手数料、物流、ロスを確認します。
  2. 販路を分ける: 直販、卸、委託、EC、法人注文を混ぜずに見ます。
  3. 工賃原資を確認する: 商品ごとに売上から必要経費を引いた金額を確認します。
  4. 購入者と競合を見る: 売り場、用途、容量、品質、選ばれる理由を整理します。
  5. 価格と仕様を試す: 値上げだけでなく、容量、包装、セット、販路の変更も検討します。
  6. 販売後に更新する: 原材料価格、売れ行き、ロス、工賃原資を定期的に見直します。

中小企業庁の2025年版小規模企業白書では、商品・サービスの原価構成と利益を把握している事業者の方が、費用増加分を価格へ転嫁できた割合が高い傾向が示されています。B型の生産活動でも、商品別の実績を把握して価格を説明できる状態をつくることが重要です。

見直したい価格設定

  • 材料費に少額を足すだけで価格を決めている
  • 直販価格のまま卸・委託販売を受けている
  • 包装、販売手数料、配送、ロスを商品別に把握していない
  • 売れた個数だけを見て、工賃原資が残ったか確認していない
  • 商品数が増え、少量資材や在庫の管理負担が大きくなっている
  • 「福祉の商品だから安く」という想定だけで価格を抑えている
  • 値上げの前に、容量、品質、見せ方、販売場所を検討していない

価格を上げれば必ず工賃が上がるわけではありません。販売数量が大きく減る、廃棄が増える、工程が複雑になる場合もあります。価格、仕様、販路、生産量を一緒に検討します。

最低限残したい記録

  • 商品名、規格、販売価格、販路
  • 期間中の製造数、販売数、返品数、廃棄数
  • 材料・包装の使用量と単価
  • 販売・決済・委託・物流の費用
  • 試作、検品、再作業で発生した費用
  • 売上から必要経費を引いた金額
  • 価格や仕様を変更した日と理由

すべてを一度に精密化する必要はありません。売上が大きい商品、赤字の可能性がある商品、原材料が値上がりした商品から始めます。

確認した公的・公的支援資料

原価項目、計算例、6つの手順はTEAM DiJobによる実務上の整理です。個別の会計処理、税務、指定基準上の経費区分は、自治体、税理士等の専門家、採用する会計基準で確認してください。

商品別の原価と販路を整理する

B型施設からの相談は無料です。現在の商品、価格、販売方法、困っていることから、負担を抑えて確認できる方法を一緒に考えます。

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