- 診断名や苦手なことだけでなく、「どの条件なら力を発揮できたか」を伝えます。
- 本人の希望と家族の心配を分け、共有する資料・相手・目的を本人と確認します。
- 学校の計画や実習記録を活用し、受取担当者と初日から試す支援を決めます。
- 古い記録や合わない支援は、新しい環境で本人と確かめて見直せます。

初日から使える支援を伝える
引継ぎで大切なのは、過去の成績や評価だけを渡すことではなく、本人の希望と、学習・実習で有効だった支援を次の担当者へつなぐことです。「箱づくりが好き」「説明は写真で見たい」「休憩を自分から伝えたい」といった情報が、仕事や日中活動を相談する手がかりになります。
学校でうまくいった方法も、音、人、時間帯、道具が変われば調整が必要です。「この支援があればどこでもできる」と決めつけず、進路先で試す条件と、困ったときの連絡先まで相談します。
学校の計画はどう使う?
| 資料 | 引継ぎに役立つ内容 |
|---|---|
| 個別の教育支援計画 | 家庭・学校・医療・福祉・労働等が連携する長期的な支援。本人や家族の願い、関係機関、配慮や引継ぎ事項を確認します。 |
| 個別の指導計画・実習記録 | 学校での具体的な指導目標・方法・評価や、実習の状況。何を、どの説明・道具・環境で行えたかを確かめます。 |
文部科学省の様式は参考様式であり、全国で同じ用紙にそろえる必要はありません。学校に現在使っている資料を尋ね、進路先が必要とする項目を確認しましょう。福祉サービス側で作る個別支援計画と学校の計画は役割が異なり、そのまま置き換えるものではありません。
誰と何を話すかを決める
- 本人と学校:伝えたい希望、実習で有効だった方法、今は変わっている情報を確かめる。
- 家族:家庭での疲れ方や移動の心配などを補う。本人の希望と異なる意見は、誰の意見か分かるようにする。
- 進路先の担当者:初日の作業・説明・休憩を誰が準備し、誰が本人の相談を受けるかを決める。
- 利用している相談支援など:生活と通所、複数の支援先の役割、開始後の相談を調整する。
大きな会議で話しにくいときは、事前に少人数で希望を聞く、絵や実物で選ぶ、短い面談を分ける方法を相談できます。全員の前で話すことだけを、本人の参加と考える必要はありません。
送付前から開始後までの手順
- 資料を本人と読み直す。最近の実習や体験を足し、過去の評価と現在の様子を区別する。
- 目的と送付先を確かめる。学校と受入れ先の担当者へ、何を準備するための共有か、必要な書類は何かを聞く。
- 共有する範囲と同意を確認する。説明・同意の手続きと安全な受渡し方法を学校へ確認する。
- 受領と初日の対応を確かめる。届いたかだけでなく、担当者が内容を理解し、必要な手順書や休憩場所を準備できるかを聞く。
- 本人と振り返る日を決める。開始後に連絡する人と時期、急に困ったときの連絡方法を残す。
会議や提出の時期は学校・地域・進路先によって異なります。卒業後も学校がどこまで相談に関われるかは一律ではないため、在学中に地域側の連絡先も確かめてください。
支援が伝わる書き方
「集中できない」「指示が通らない」だけでは、次の担当者が何を変えればよいか分かりません。場面・本人の様子・試した方法・変化を一緒に残します。
| 情報が足りない書き方 | 次の担当者が試せる書き方 |
|---|---|
| 説明が苦手 | 口頭で複数の工程を続けて伝えると手が止まった。写真を工程順に並べ、最初の一つを実演すると取りかかれた。 |
| 集中が続かない | 人の出入りが多い席で周囲を何度も見ていた。通路から離れた席では箱の組立てを続けられた。別の部屋や一日通しての作業は未確認。 |
| 休みたいと言わない | 「大丈夫?」にはうなずくことがあった。「続ける・休む」の絵を見せると、休む方を指した。本人が使いたい伝え方を次の場所でも確認する。 |
作業量や時間を書くときも、休憩・道具・説明者などの条件を添えます。短い実習での結果を、一日の勤務や利用を続けられる証拠にしないことが大切です。
本人に、誰へ何を伝えるか確認する
国立特別支援教育総合研究所は、就労先への引継ぎに、本人・保護者の同意を得て個別の教育支援計画を活用することを示しています。「支援に必要だから」と、本人への説明を省かないようにしましょう。
- 相手の所属・担当者と、資料を使う目的。
- 渡す資料の名称・ページ・項目と、渡さない部分。
- 受取先で閲覧する人、保管方法、さらに別の相手へ渡す場合の扱い。
- 間違いや古い情報を直したいときの連絡先。
「写真の手順書と休憩の伝え方は、新しい担当者に知ってほしいです。家庭の詳しい事情は今は渡したくありません。安全のために必要な情報があれば、誰が何に使うのか聞いてから相談したいです。」
本人が成人していても、家族だけに説明して終わらせず、本人が理解しやすい方法で意思を確かめます。具体的な同意書、保護者との確認、情報提供の根拠や例外は、学校の設置主体や状況によって確認が必要です。すべての共有に同じ法的手続きが当てはまるわけではありません。
同じ資料を全員に配らなくてもよい
| 共有先 | 目的から絞りたい情報 |
|---|---|
| 企業の受入れ担当者 | 担当する仕事の説明方法、配慮、相談の伝え方。職場内で誰が知る必要があるかも確認する。 |
| B型などのサービス事業所 | 本人の活動の希望、支援方法、通所や休憩、日常の安全に必要な事項。診療情報などは必要性と共有範囲を別に確かめる。 |
| 利用している相談支援 | 暮らしの希望と課題、サービスの組合せ、各機関の担当と連絡先。仕事の細かな記録まで全件渡す必要があるかを相談する。 |
服薬や緊急時対応など安全に関わる情報は、一枚の要約で省略して済ませず、必要な範囲を本人・家族、学校、受入れ先、必要に応じ医療側と確認します。公開SNS、共有範囲が不明なチャットや個人用クラウドへ資料を置かないようにしてください。
支援メモの記入例
次は、箱の組立てを希望するAさんの仮の記入例です。学校や進路先の正式な計画・同意書の代わりにはなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本人の言葉 | 「箱をつくる仕事をしたい。休憩は静かな所がよい。」写真を選び、短い言葉で確認。 |
| 学校で確かめたこと | 10月の半日実習では、写真を3工程ずつ示し、完成見本を置くと自分から次の工程へ進んだ。通路から離れた席を使用。 |
| 困ったときの伝え方 | 続ける・休むの絵から選んだ。新しい職員にも使いたいか、初日に本人へ聞く。 |
| 家族の心配 | 帰宅後に疲れが残らないか心配。本人の「半日だけにしたい」という希望としては扱わず、開始後に本人と確認する。 |
| まだ分からないこと | 一日通しての活動、違う席や音の環境、別の職員による説明。できる・できないを先に決めず、試す条件を担当者と相談。 |
| 最初に準備すること | 受入れ担当が見本と写真手順、休憩場所を確認。実際の作業との違いを初日に本人へ伝える。 |
| 確認日・共有先 | 2026年10月26日、本人・家族・担任で内容を確認。進路先の受入れ担当と、本人が利用している相談支援の担当へ、このメモを共有する範囲を確認。 |
| 次の確認 | 開始後の最初の面談で、本人と受入れ担当が説明・休憩・疲れ方を確認。面談日は開始前に相談して決める。変更点は学校と相談支援へ共有してよい範囲を本人に聞く。 |
本人の発言、学校の観察、家族の心配を混ぜないと、「誰が、いつ、どの場面で確かめたか」が伝わります。健康・安全や連絡先など別紙が必要な情報は、担当者と確認してください。
受け取った後の確認と見直し
受入れ先は、本人と資料を見ながら「まず試したい支援」と「今の環境では調整する支援」を確かめます。B型などのサービス利用では、本人の現在の希望を個別支援計画の面談にも伝えましょう。
| 確認する場面 | 担当者に聞きたいこと |
|---|---|
| 開始前 | 誰が資料を受け取り、初日に対応するか。本人が分からない・休みたいと伝える方法を準備できるか。 |
| 通い始めた後 | 本人は説明を理解できたか。休憩を選べたか。帰宅後を含む疲れ方はどうか。試す条件を変える必要があるか。 |
| 記録が合わないとき | どの記述がいつの情報か。現在の様子を誰と確認し、何を追記・訂正するか。既に共有した相手にも更新が必要か。 |
| 担当者や進路が変わるとき | 新しい共有先と目的を本人に説明したか。引き続き必要な支援と、不要になった支援は何か。 |
「以前の資料には口頭説明が難しいとありますが、今は一つずつなら理解できます。最近の実習記録を一緒に確認し、今も必要な写真と、口頭でよい場面を書き直したいです。」
資料を持つ担当者へ具体的な記述を示し、確認した日と変更点、共有済みの相手への連絡方法を相談してください。元の記録の保存・訂正方法は学校や事業所の手続きに従います。
面談が終わる前の確認
- 本人が知ってほしい希望と、今は共有したくない情報を聞けたか。
- 得意なこと、条件付きでできたこと、未確認のことが区別されているか。
- 誰が資料を受け取り、初日の準備と本人への説明を行うか決まったか。
- 健康・安全上の必要事項を、適切な担当者と確認できたか。
- 困ったときの相談相手と、次に状況を確かめる時期が分かるか。
共有するか迷う情報があるときは、学校の進路担当や個人情報の担当窓口に、用途と必要な範囲を尋ねましょう。進路や利用先がまだ未定なら、卒業後の進路が決まらないときの相談から、今確認すべきことを分けて考えられます。
参考資料
- 就労先の引継ぎ(国立特別支援教育総合研究所・発達障害教育推進センター):本人の希望・強み、配慮、同意を得た計画の共有。
- 個別の教育支援計画の参考様式(文部科学省):計画の役割、地域・学校の様式の扱い、引継ぎ事項。
2026年10月26日確認。共有の手続き、会議の日程、保管や訂正の方法は学校・自治体・受入れ先によって異なります。本人の意思と適用される規程を、各担当窓口で確認してください。