この記事の要点
  • 前年度の実績と本人の希望を確認し、目標工賃に必要な支払総額と生産活動の収支をつなぎます。
  • 売上の増加額ではなく、追加経費を引いた改善額で施策を比較します。
  • 担当・期限・試す条件と、続ける・変える・止める判断を決めます。
  • 施設内の月次見直しと、行政へ提出した計画の変更手続きは別です。
作り手と支援・事業担当者が布小物の商品や包装、計画のノートを一緒に見比べるイメージ
商品と働き方を一緒に考えるイメージ。実在の人物・施設・商品や取組実績の写真ではありません。

工賃向上計画で決めること

指定基準第201条は、生産活動の収入から必要経費を控除した額に相当する工賃の支払いと、工賃水準の向上に努めることを定めています。毎年度、目標水準を設定し、目標と前年度の工賃平均額を利用者へ通知し、都道府県へ報告する必要があります。

国の基本指針では、B型事業所は災害等の特別な事情がない限り工賃向上計画を作成します。2024〜2026年度の各年度の目標工賃月額と具体的な取組を盛り込み、前年度実績を踏まえた点検・評価につなげます。2027年度以降の扱いは、今後の国・自治体の案内を確認してください。

提出済みの目標は、月次会議だけで書き換えない

福岡県の2026年度の変更案内は、変更期限を2026年5月29日とし、期限後は同年度の計画内容を修正できないとしています。年度途中の新設・未作成の場合は別途作成・提出が必要です。いま未達が分かった場合は、施設内の改善策を検討しつつ、提出や報酬への影響を県・指定権者へ確認します。他地域も提出先、様式、期限を個別に確かめてください。

平均工賃・支払総額・本人の希望を分ける

施設の平均工賃目標は、本人全員に同額を支払う約束や、通所日数を増やす指示ではありません。個人の希望や参加状況と、施設全体の収支を行き来して確かめます。

確認する数字・希望計画で使う場面
行政報告用の平均工賃自治体の最新の算出方法で前年度実績と目標を比較。在籍人数で単純に割った数字と混同しない。
工賃の支払総額工賃規程、利用見込み、支払時期から必要額を検討。月別の配分と年間合計を確認する。
本人の希望と必要な支援やりたい仕事、得意な工程、休憩や道具の工夫を確認。金額だけを理由に担当を一方的に変えない。

報告用の平均値と個人が受け取る工賃の違いは、B型の工賃と平均工賃の読み方で確認できます。

商品・作業・販路別に現在地を把握する

まず前年度の実績を確認し、直近の月別推移と比べます。日々の検討は主力商品や受託作業から始め、直販・卸・委託販売など条件が違うものは分けます。繁忙月だけを12倍せず、閑散期や年1回の費用も見込んでください。

  • 売上: 単価、販売数、受注先、継続か単発か。見積中・受注済み・売上計上済みを分ける。
  • 利用者工賃以外の生産活動経費: 材料、包装、手数料、配送、設備等の配分、試作・廃棄。未計上の請求や在庫も確認する。
  • 作業と支援: 本人が選べる工程、準備・検品・再作業、職員の時間、安全と納期。
  • 資金繰り: 材料を払う日と入金日。売上が立っていても、工賃支払いに必要な現金があるか。
工賃を二重に差し引かない

以下の計画上の「工賃原資」は、売上から利用者工賃を除く生産活動経費を引いた見込額です。会計帳簿では工賃自体も費用に計上されるため、費用総額をそのまま引いてから再び工賃を引かないようにします。福祉事業の支援費用との区分、共通経費、在庫、積立や税の処理は、採用する会計基準と会計担当者・専門家に確認してください。

商品ごとの手数料や売れ残りを含めた計算は、授産製品の原価・価格設定の計算例が役立ちます。

目標との差を改善額に置き換える

  1. 前年度の工賃実績と、本人が望む収入・仕事・参加方法を確かめます。
  2. 行政用の算出方法と工賃規程を確認し、目標に向けて必要な支払総額を検討します。
  3. 月ごとの売上と利用者工賃以外の生産活動経費を見込み、現在の工賃原資を出します。
  4. 目標原資との差額に対し、価格・数量・包装・販路・継続受注の変更を割り当てます。
  5. 追加経費、工程、支援体制、入金時期を確認し、無理なく試せる施策から始めます。

平均工賃を上げるために利用日数の少ない人の受入れを避けたり、希望しない仕事へ移したりしないことが前提です。工程や取引条件を変え、参加の選択肢を保てるかも計画の判断材料にします。

月6万円の改善を考える計算例

仮の月次条件です。売上50万円、利用者工賃以外の生産活動経費32万円なら、計画上の工賃原資は18万円。目標を24万円と置いた場合の差額は6万円です。税の影響、在庫・積立の増減はないものとし、行政の平均工賃や個人別工賃の算定には使いません。

施策の仮定改善額の計算
既存商品の価格変更400個を50円値上げし販売数・手数料等が変わらなければ、400個 × 50円 = 20,000円増。
包装の共通化1,000個分の包装費が1個10円下がり、他の費用が変わらなければ、1,000個 × 10円 = 10,000円増。
別の受託作業を追加売上50,000円 − 材料・配送等の追加経費20,000円 = 30,000円増。
合計20,000円 + 10,000円 + 30,000円 = 60,000円増。

3施策は別の商品・作業を対象とし、改善額は重複させません。値上げ後も400個売れるとは限らず、受託作業も契約が成立するまでは未確定です。追加の検品・保管・道具の費用が生じたら、見込額から差し引きます。

値上げ後に350個しか売れなかった場合

旧価格500円、値上げ後550円、1個当たりの変動経費300円、その他の経費は同額と仮定します。旧条件は(500円 − 300円)× 400個 = 80,000円。変更後は(550円 − 300円)× 350個 = 87,500円で、改善は7,500円です。計画の20,000円より12,500円少なくなります。単価だけでなく販売数と経費を実績に置き換え、他施策も確定した額で合計してください。

施策に担当・期限・判断条件を付ける

「販路を増やす」だけでは着手が決まりません。最初に何を試し、誰が返事を取り、どの結果なら続けるかを書きます。

施策担当・期限・判断の記入例
価格と商品構成販売担当が次の2回の販売で対象商品を試す。購入数、工賃原資、返品を旧条件と比較し、次回会議で継続か再検討か決める。
包装・工程製造・支援担当が2週間で見本を試す。本人が扱いやすいか、表示と品質、再作業、経費を確認して採否を決める。
継続受注営業担当が月末までに既存先へ再注文時期と仕様を確認。見積中と確定注文を分け、管理者が能力・納期・入金条件を確認して受注判断する。

職員時間が増える場合は、その時間が支援や他の仕事に与える影響も比較します。時間当たりの数字だけで本人の価値や担当の可否を決めず、道具・配置・説明・工程分けで参加しやすくできるかを確かめます。

受注を増やす前に確認する条件

  • 本人が希望を伝え、担当や休憩の変更を相談できるか。
  • 検品や再作業を含め、支援体制と納期を両立できるか。
  • 必要な表示・衛生・安全を守り、品質を確かめる担当がいるか。
  • 材料の先払い、設備、保管場所、入金までの資金を確保できるか。
  • 取引条件の変更、不良、キャンセル、納期調整を誰と協議するか。

無理があれば、数量を減らす、納期を分ける、仕様をそろえる、小口の試作から始める方法を相手と協議します。企業への条件の伝え方は、B型施設へ仕事を発注するときの確認事項にもまとまっています。

月次会議で続ける・変える・止めるを決める

売上と経費を同じ期間で集計し、計画との差、その原因、次の担当と期限を1枚に残します。金額だけでなく、本人の感想、参加の変化、品質、支援への影響も確認します。

実績から分かったこと次の判断
値上げで販売数が減った合計の工賃原資と在庫を再計算。原資が増えても、廃棄・資金繰り・需要の変化を確認して継続する。
包装費は減ったが再作業が増えた品質と本人の扱いやすさを再確認。道具や工程を変えるか、旧仕様へ戻すかを決める。
見積中の受注が決まらない確定売上に入れず、返事の日を確認。材料の先行購入や生産を見直す。
受注は増えたが支援にしわ寄せが出た受注数・納期・工程・体制を再協議。次の注文を止める判断も含め、本人と職員の負担を確認する。

季節変動がある事業は前年同月や年間の見通しとも比べます。未達を利用者の努力不足に置き換えず、価格、需要、工程、取引条件のどこを変えるかを決めてください。提出済み計画の変更可否は、施設内の改善判断とは別に所管へ確認します。

本人へは施設の目標と自分の工賃を分けて伝える

目標と前年度の平均額を知らせる際は、本人が理解しやすい言葉や図で説明します。「施設の平均目標」と「あなたの工賃が決まる方法」を別にし、増額を約束したように受け取られないか確かめます。

  • どの商品や仕事を、どのように変えたいのか。
  • 本人の担当、通い方、休憩や支援は変わるのか。希望はどう伝えられるか。
  • 工賃規程で何が支払額に反映され、分からないときは誰に聞けるか。
  • 試した後に、いつ本人の感想や困った点を聞くか。

管理者が全体判断と自治体への確認、会計担当が金額、製造・支援担当が工程と参加、営業担当が顧客条件を持ち寄ります。本人の希望を支援内容へ反映する際は、個別支援計画で本人が確かめたいことも参照してください。

最初の会議に持ち寄るもの

  • 提出済みの工賃向上計画、直近の工賃実績、算出方法、工賃規程。
  • 主な商品・作業・販路ごとの売上、利用者工賃以外の経費、在庫、入出金予定。
  • 本人がやりたい仕事、うまく参加できる条件、負担になっている工程。
  • いま試せる改善策と、確認する担当・期限・判断条件。

全商品を一度に変える必要はありません。売上や支出の大きい仕事、困りごとの多い工程から、実績を追える範囲で始められます。

商品・販路から工賃向上を考える

B型施設からの相談は無料です。現在の商品、販売先、売上や経費の悩みから、商品開発・販路・運営改善についてご相談いただけます。

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参考資料

資料確認日: 2026年10月23日。自治体への提出・報酬の取扱いは都道府県・指定権者、個別の会計・税務は採用する会計基準と専門家に確認してください。