- B型施設への発注は、企業と施設運営法人との取引です。
- 作業名だけでなく、完成条件、見本、数量、納期、検品方法を伝えます。
- 「福祉だから安く」ではなく、必要な工程と継続できる価格を協議します。
- B型施設への業務発注と、企業が本人を雇用する障害者雇用は別の仕組みです。
最初に知っておきたいB型の仕組み
就労継続支援B型は、通常の事業所に雇用されることが困難な人へ、生産活動などの機会と、就労に必要な知識・能力の向上に必要な支援を提供する障害福祉サービスです。利用者とB型事業所は雇用契約を結びません。
企業が仕事を依頼する相手は、利用者個人ではなくB型事業所を運営する法人です。企業は作業条件を施設の担当者と確認し、施設が利用者への支援、作業の組み立て、進行管理を行います。
B型施設へ仕事を発注しても、その施設の利用者を発注企業が雇用したことにはなりません。法定雇用率に算入される障害者雇用と、障害福祉サービス事業所への業務発注を混同しないことが重要です。
発注を検討できる仕事
対応できる作業、数量、設備、納期、情報管理体制は施設ごとに異なります。次は相談されることがある作業例であり、すべてのB型施設が対応できるという意味ではありません。
| 領域 | 作業例 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 加工・封入 | 袋詰め、シール貼り、セット組み、部品組立 | 見本、許容差、資材、数量、検品 |
| 発送 | 梱包、宛名貼付、発送準備、在庫確認 | 個人情報、誤発送対策、保管、締切 |
| デジタル | データ入力、画像加工、記事入稿、情報整理 | 端末、アカウント、機密情報、納品形式 |
| 清掃・屋外 | 施設清掃、除草、農作業、設営補助 | 作業場所、安全、天候、移動、設備 |
| 製造・共同開発 | 食品、雑貨、ノベルティ、ギフトの製造 | 表示、品質、ロット、原材料、販売責任 |
相談前に整理する10項目
1. 発注の目的
外注、商品調達、地域連携、共同開発など、何を実現したいかを伝えます。
2. 完成条件
何ができれば完了か、サイズ、位置、形式、許容範囲を具体化します。
3. 見本と手順
完成見本、良品・不良品の例、手順書を用意できるか確認します。
4. 数量と変動
初回数量、定期数量、繁忙期、最低・最大ロットの見込みを伝えます。
5. 納期
納品日だけでなく、資材支給日、中間確認、再作業に使える日数を決めます。
6. 資材と物流
誰が材料を用意し、どこへ搬入し、完成品をどう回収するかを決めます。
7. 検品と再作業
検品者、不良の基準、報告方法、再作業の条件と費用を確認します。
8. 情報管理
個人情報、機密情報、アカウント、データ保存・削除の条件を決めます。
9. 価格と支払
単価、初期費用、運送費、消費税、締日、支払日、振込条件を確認します。
10. 変更と中止
数量変更、延期、中止、資材不良、災害時の連絡と費用負担を決めます。
発注までの基本的な流れ
- 依頼内容の整理: 目的、作業、数量、納期、予算、作業場所をまとめます。
- 対応可能性の確認: 施設の設備、体制、作業経験、本人への支援と無理なく両立できるかを確認します。
- 試作・試行: 少量で工程、時間、品質、検品方法を確かめます。
- 見積・条件調整: 試行結果をもとに単価、数量、納期、物流、役割を協議します。
- 契約・発注: 合意した内容を書面または適切な電磁的方法で確認します。
- 納品・振り返り: 品質と進行を確認し、次回の手順、数量、価格へ反映します。
最初から大量・短納期で依頼すると、施設側が実際の作業時間や検品負担を把握できません。小さく試し、受発注の双方が継続可能と判断してから数量を増やします。
価格を「安さ」だけで決めない
B型施設の生産活動による収入は、必要経費を差し引いたうえで利用者の工賃につながります。依頼価格が材料、支援を伴う工程設計、検品、管理、運送などの負担を下回ると、仕事が増えても工賃の原資を生みにくくなります。
企業側で既存の外注単価がある場合も、そのまま提示して終わらせず、作業内容と条件が同じかを確認します。単価を比較するときは、完成条件、検品、資材、物流、再作業、発注量、継続性をそろえます。
授産製品の原価と価格設定では、商品販売を例に、必要経費と工賃原資の考え方を整理しています。
契約・法令で確認すること
施設外就労の場合
利用者が企業等の作業場所で作業する施設外就労について、厚生労働省通知は、施設外就労先企業と事業所運営法人が請負作業に関する契約を締結すること、作業の指導等は施設外就労先企業ではなく事業所が行うことなどを示しています。通常の施設内作業と同じ扱いだと決めつけず、施設側が自治体の運用も含めて要件を確認します。
中小受託取引適正化法
2026年1月1日に中小受託取引適正化法、通称「取適法」が施行されました。対象となる取引では、発注内容等の明示、記録、支払期日などの義務や禁止行為があります。ただし、適用の有無は委託内容、資本金、従業員基準などで決まるため、B型施設への発注がすべて同法の対象になるとは限りません。自社の法務・調達担当または専門家へ確認してください。
情報・権利・表示
個人情報や機密情報を扱う場合は、閲覧者、端末、保存場所、持ち出し、削除、事故時の連絡を決めます。共同開発では、デザイン、写真、文章、金型、レシピ等の権利、商品表示、販売主体、回収時の対応も確認します。
混同しやすい制度
発注と障害者雇用
障害者雇用率制度は、企業が対象となる障害者を雇用する制度です。B型施設への業務発注は施設運営法人との取引であり、それ自体を発注企業の障害者雇用人数として扱うものではありません。
発注と障害者優先調達推進法
障害者優先調達推進法は、国や地方公共団体等による障害者就労施設等からの物品・役務の調達を推進する法律です。民間企業がB型施設へ発注するときの一般的な義務を定めた法律ではありません。民間企業は自社の調達・地域連携方針として発注を位置付けます。
よくある質問
どの施設へ頼んでも同じ作業ができますか?
できません。設備、職員体制、利用者の希望や経験、現在の受注状況は施設ごとに異なります。作業名だけで判断せず、見本と条件を提示して確認します。
個々の利用者へ直接指示してよいですか?
企業の窓口は原則として施設の担当者です。特に施設外就労では、厚生労働省通知上、利用者への必要な指導等は事業所が行います。連絡経路と現場での役割を契約前に決めてください。
社会貢献として広報できますか?
取引の事実は説明できますが、本人の氏名、顔、障害、作業風景を許可なく公開できません。施設と本人の許諾、表現、写真の使用範囲を確認し、企業イメージだけを目的に扱わないようにします。
確認した公的資料
- 障害福祉サービスの内容(厚生労働省)
- 就労移行支援事業、就労継続支援事業における留意事項(厚生労働省)
- 中小受託取引適正化法関係(公正取引委員会)
- 障害者優先調達推進法に基づく調達(厚生労働省)
- 障害者雇用対策(厚生労働省)
発注前の10項目と基本的な流れは法令上の一律の様式ではなく、認識違いを減らすためのTEAM DiJobによる実務上の整理です。個別契約の法的判断は専門家へ確認してください。