- 直接発注か共同受注窓口を通すかで、契約・請求・品質管理の担当を確認します。
- 作業名だけでなく、完成条件、見本、数量、納期、検品方法を伝えます。
- 試作の費用と合格条件を先に決め、本発注できる体制かを双方で判断します。
- 「福祉だから安く」ではなく、必要な工程と継続できる価格を協議します。
- B型施設への業務発注と、企業が本人を雇用する障害者雇用は別の仕組みです。

最初に知っておきたいB型の仕組み
就労継続支援B型は、通常の事業所に雇用されることが困難な人へ、生産活動などの機会と、就労に必要な知識・能力の向上に必要な支援を提供する障害福祉サービスです。利用者とB型事業所は雇用契約を結びません。
直接発注する場合の取引先は、利用者個人ではなくB型事業所を運営する法人です。共同受注窓口を通す場合は、窓口が契約先になる仕組みもあります。企業は契約先と連絡担当者を確かめ、利用者への支援や作業の組み立ては施設側と調整します。
B型施設へ仕事を発注しても、その施設の利用者を発注企業が雇用したことにはなりません。法定雇用率に算入される障害者雇用と、障害福祉サービス事業所への業務発注を混同しないことが重要です。
施設は仕事の受注だけでなく、本人の希望や体調に応じた支援も担っています。人数から一律に生産量を計算したり、障害名だけでできる仕事を決めたりせず、担当者と工程・設備・受注状況を確認します。
直接発注と共同受注窓口、どちらに相談する?
| 相談方法 | 向いている状況と確認点 |
|---|---|
| 施設へ直接相談 | 依頼先の候補や得意な工程が分かっている場合。運営法人、見積担当、検品、納品、請求の担当を確認します。 |
| 共同受注窓口へ相談 | 対応施設を探したい、複数施設で分担できるか相談したい場合。窓口が契約まで担うのか、仲介のみか、費用・品質管理・事故時の責任を確認します。 |
たとえば東京都共同受注窓口TOSTEPの案内では、依頼者と窓口との契約が基本とされています。これは同窓口の仕組みであり、すべての窓口の契約方式ではありません。施設数が増えても数量や納期が必ず確保できるわけではなく、案件ごとの調整が必要です。
福岡県「IT業務を発注して障がいのある方の自立を支える力に!」は、データ入力・集計、書類の電子化、Web関連業務などの例と共同受注窓口を案内しています。県内のB型事業所へ分配し、窓口が品質管理・納品を行う取組です。対象地域、作業範囲、機密情報の扱い、費用、納期は案内先へ個別に確認してください。TEAM DiJob自身の受託体制を示すものではありません。
発注を検討できる仕事
対応できる作業、数量、設備、納期、情報管理体制は施設ごとに異なります。次は相談されることがある作業例であり、すべてのB型施設が対応できるという意味ではありません。
| 領域 | 作業例 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 加工・封入 | 袋詰め、シール貼り、セット組み、部品組立 | 見本、許容差、資材、数量、検品 |
| 発送 | 梱包、宛名貼付、発送準備、在庫確認 | 個人情報、誤発送対策、保管、締切 |
| デジタル | データ入力、画像加工、記事入稿、情報整理 | 端末、アカウント、機密情報、納品形式 |
| 清掃・屋外 | 施設清掃、除草、農作業、設営補助 | 作業場所、安全、天候、移動、設備 |
| 製造・共同開発 | 食品、雑貨、ノベルティ、ギフトの製造 | 表示、品質、ロット、原材料、販売責任 |
相談前に整理する10項目
1. 発注の目的
外注、商品調達、地域連携、共同開発など、何を実現したいかを伝えます。
2. 完成条件
何ができれば完了か、サイズ、位置、形式、許容範囲を具体化します。
3. 見本と手順
完成見本、良品・不良品の例、手順書を用意できるか確認します。
4. 数量と変動
初回数量、定期数量、繁忙期、最低・最大ロットの見込みを伝えます。
5. 納期
納品日だけでなく、資材支給日、中間確認、再作業に使える日数を決めます。
6. 資材と物流
誰が材料を用意し、どこへ搬入し、完成品をどう回収するかを決めます。
7. 検品と再作業
検品者、不良の基準、報告方法、再作業の条件と費用を確認します。
8. 情報管理
個人情報、機密情報、アカウント、データ保存・削除の条件を決めます。
9. 価格と支払
単価、初期費用、運送費、消費税、締日、支払日、振込条件を確認します。
10. 変更と中止
数量変更、延期、中止、資材不良、災害時の連絡と費用負担を決めます。
初回の見積依頼の記入例
「封入を500件お願いします」だけでは、折り作業、封緘、宛名、発送まで含むか判断できません。次は架空の封入案件の相談例です。数量・試作数は推奨ロットや施設の対応実績ではなく、説明用の設定です。未確定の項目は「相談したい」と書いて構いません。
| 項目 | 依頼文に書く内容の例 |
|---|---|
| 作業と完成状態 | 封筒にチラシA・Bを各1枚入れ、指定のテープで封緘。折り作業・宛名貼り・郵送は依頼に含めません。完成見本と順序を示す写真を用意できます。 |
| 数量と試作 | 本発注の希望は500セット。先に10セットを試作して確認したいです。試作の対応可否、費用、必要資材数を相談させてください。 |
| 資材と保管 | 封筒・印刷物・テープは当社が支給。予備の必要数、搬入日時、保管スペース、余った資材の返却方法を確認したいです。 |
| 日程と納品 | 希望搬入日・見本確認日・納品日をそれぞれ記載。完成品は当社が回収し、箱分けは50セット単位を希望します。分納が必要なら相談可能です。 |
| 検品と不明点 | チラシの不足・重複、破れ、封緘漏れを確認。汚れの許容範囲は見本で相談し、判断に迷うものは混ぜずに保留して当社担当者へ連絡してください。 |
| 見積と支払 | 試作費、本作業費、資材費、検品費、梱包・運送費の含まれる範囲と消費税を確認したいです。予算上限は社内確認中。見積後に支払期日と方法を合意します。 |
この記入例は相談用で、正式な発注書や契約書の代わりではありません。宛名データなどがある案件は、最初の相談で実データを送らず、ダミーの見本で工程を説明し、情報管理の条件を決めてから受け渡します。
発注までの基本的な流れ
- 依頼内容の整理: 目的、作業、数量、納期、予算、作業場所をまとめます。
- 対応可能性の確認: 施設の設備、体制、作業経験、本人への支援と無理なく両立できるかを確認します。
- 試作・試行: 少量で工程、時間、品質、検品方法を確かめます。
- 見積・条件調整: 試行結果をもとに単価、数量、納期、物流、役割を協議します。
- 契約・発注: 合意した内容を書面または適切な電磁的方法で確認します。
- 納品・振り返り: 品質と進行を確認し、次回の手順、数量、価格へ反映します。
初めての工程で、試行せずに大量・短納期を合意すると、実際の作業時間や検品負担を読み違えるおそれがあります。試作する数量・費用・結果の確認日を相談し、双方が継続可能と判断してから本発注へ進みます。試作を当然に無償と決めないことも大切です。
試作の後、本発注へ進めるかを判断する
- 品質: 合意した見本と基準で判定できるか。担当者が変わっても判断がそろうか。
- 工程と納期: 作業だけでなく準備・検品・箱詰め・回収まで含めて間に合うか。試作の所要時間を単純に数量倍していないか。
- 負担と費用: 本人への過重な負担を避け、検品や再作業を含む条件で施設側も続けられるか。
- 連絡: 判断に迷う品物や資材の不足が出たとき、誰がいつ返答・承認するか。
基準が曖昧なら見本と仕様を直して再試作、納期が難しければ数量・分納・依頼範囲を再協議します。条件が整わない場合は本発注を見送る判断も必要です。初回の合意内容と見本は版を付けて残し、変更時は旧版と混ざらないようにします。
納品後の認識違いを防ぐ3つの取り決め
| 起こりうる場面 | 先に決めること |
|---|---|
| 搬入した資材が不足・不良だった | 到着時の数量確認、使用せず保留する基準、追加搬入の担当、納期への影響と費用の協議方法。 |
| 開始後に印刷物や包装を変えたい | 進行済み・未着手の数量を確認し、追加工程、資材、単価、納期を再協議。誰が承認すれば再開するかを記録。 |
| 納品後に不良が見つかった | 検査の期限・方法、不良の写真・数量・保管、原因確認、再作業や回収の担当と費用。受注側の負担と自動的に決めない。 |
責任や費用は原因と契約条件、適用法令を踏まえて判断します。「試作で大丈夫だった」「いつもの作業だから」だけで、変更・追加作業・不良時の扱いを省略しないようにします。
価格を「安さ」だけで決めない
B型では、生産活動の収入からその事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払う仕組みです。仕事の数量や売上だけでは、工賃向上を保証できません。価格と工程を検討するときは、材料・梱包・運送などの費用と、検品・進行管理の負担も確認します。
なお、福祉サービスの支援費用と生産活動の費用は区分して扱うため、「施設職員の支援費はすべて工賃から引く」と理解しないでください。会計上の費用区分・按分や積立金の扱いは、施設の会計担当者・指定権者等へ確認します。ここでの見積比較は、個別の工賃配分を決める計算式ではありません。
企業側で既存の外注単価がある場合も、そのまま提示して終わらせず、作業内容と条件が同じかを確認します。単価を比較するときは、完成条件、検品、資材、物流、再作業、発注量、継続性をそろえます。
授産製品の原価と価格設定では、商品販売を例に、必要経費と工賃原資の考え方を整理しています。
契約・法令で確認すること
施設外就労の場合
利用者が企業等の作業場所で作業する施設外就労について、厚生労働省通知は、施設外就労先企業と事業所運営法人が請負作業に関する契約を締結すること、作業の指導等は施設外就労先企業ではなく事業所が行うことなどを示しています。通常の施設内作業と同じ扱いだと決めつけず、施設側が自治体の運用も含めて要件を確認します。
中小受託取引適正化法
2026年1月1日に中小受託取引適正化法、通称「取適法」が施行されました。対象となる取引では、発注内容等の明示、記録、支払期日などの義務や禁止行為があります。ただし、適用の有無は委託内容、資本金、従業員基準などで決まるため、B型施設への発注がすべて同法の対象になるとは限りません。自社の法務・調達担当または専門家へ確認してください。
適用対象なら、発注時に直ちに発注内容等を書面・電磁的方法で明示する必要があります。また、検査の有無にかかわらず、物品等の受領日(役務は提供日)から60日以内のできる限り短い期間に支払期日を定める義務があります。試作の相談メールだけで正式な発注条件が整ったと判断せず、適用基準と必要事項を公正取引委員会「取適法の概要」と「委託事業者の義務」で確認してください。
情報・権利・表示
個人情報や機密情報を扱う場合は、閲覧者、端末、保存場所、持ち出し、削除、事故時の連絡を決めます。共同開発では、デザイン、写真、文章、金型、レシピ等の権利、商品表示、販売主体、回収時の対応も確認します。
混同しやすい制度
発注と障害者雇用
障害者雇用率制度は、企業が対象となる障害者を雇用する制度です。B型施設への業務発注は施設運営法人や共同受注窓口との取引であり、それ自体を発注企業の障害者雇用人数として扱うものではありません。
発注と障害者優先調達推進法
障害者優先調達推進法は、国や地方公共団体等による障害者就労施設等からの物品・役務の調達を推進する法律です。民間企業がB型施設へ発注するときの一般的な義務を定めた法律ではありません。民間企業は自社の調達・地域連携方針として発注を位置付けます。
よくある質問
どの施設へ頼んでも同じ作業ができますか?
できません。設備、職員体制、利用者の希望や経験、現在の受注状況は施設ごとに異なります。作業名だけで判断せず、見本と条件を提示して確認します。
個々の利用者へ直接指示してよいですか?
企業の窓口は原則として施設の担当者です。特に施設外就労では、厚生労働省通知上、利用者への必要な指導等は事業所が行います。連絡経路と現場での役割を契約前に決めてください。
社会貢献として広報できますか?
広報する内容と範囲を先に施設と相談します。本人の氏名、顔、障害、作業風景を載せる場合は本人の意思を確認し、許諾、表現、写真の使用範囲を整理してください。施設との取引合意を、そのまま本人の写真掲載への同意と扱わないようにします。
確認した資料・次に確認できる情報
- 障害福祉サービスの内容(厚生労働省):B型が非雇用型の障害福祉サービスであることを確認する入口。
- 就労移行支援事業、就労継続支援事業における留意事項(厚生労働省通知・仙台市掲載PDF):2025年3月31日改正の国の通知。施設外就労の契約と利用者への指導等の役割を記載。報酬・実施要件の個別適用はその後の通知と自治体の取扱いも確認してください。
- 就労支援事業会計の運用ガイドライン(厚生労働省掲載・PDF):令和3年度事業の資料。生産活動と福祉事業活動の会計区分、費用と工賃の関係を説明。個別の会計処理は担当者等へ確認してください。
- 中小受託取引適正化法関係(公正取引委員会):施行日、最新資料、相談窓口の案内。
- 障害者優先調達推進法に基づく調達(厚生労働省):国・地方公共団体等による調達の制度。民間企業への一律の発注義務と混同しないための資料。
- 障害者雇用対策(厚生労働省):企業による雇用と雇用率制度を確認する資料。
- TOSTEP「ネットワークとお仕事の流れ」:東京都の窓口での相談から契約・納品までを確認できる案内。他地域や他団体の契約条件は別途確認が必要です。
2026年10月時点の資料を確認しています。制度の説明は全国共通の資料を基にしていますが、共同受注窓口の対象地域・契約方式や施設外就労の具体的な手続きは窓口・自治体により確認が必要です。10項目、記入例、試作の判断材料はTEAM DiJobによる実務上の整理で、法定の統一様式ではありません。個別契約の法的判断は専門家へ確認してください。